イスラエル・イラン紛争が突きつけた、日本原油調達の脆弱性

6月13日、イスラエルがイランの核施設や軍事施設を空爆した。イランがそれに応じて報復攻撃を行ったことを受けて、イスラエルはイランのエネルギー関連施設や国営テレビ局を攻撃するなど、報復の応酬が続いた。日本時間22日には、米国がイランの3カ所の核施設への攻撃に踏み切り、その報復手段として、イランが世界の石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖をちらつかせるなど、事態の緊張が一気に高まった。

軍事衝突激化で原油価格急騰

イスラエルとイランの軍事衝突によりホルムズ海峡が封鎖されれば、日本の原油調達に大きな影響を与える。画像はイメージです(出所:PIXTA)

軍事衝突の激化を受けて、原油価格は急騰した。代表的な指標であるWTI原油先物価格の終値は18日に1バレル75ドル台と、イスラエルによる攻撃開始前から10%強も上昇した。筆者の試算によると、仮に、イランがホルムズ海峡の封鎖に踏み切れば、原油価格は同140ドル近辺まで急騰する可能性があった。

中東情勢の緊迫化、日本経済に深刻な影響も

中東情勢の緊迫化は、日本経済にも深刻な影響を及ぼしかねない。原油調達のほぼ全てを輸入に頼る日本にとって、原油価格の高騰は所得の海外流出につながり、企業収益を圧迫するほか、やがては実質賃金を下押しする。その原油調達はアラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなど中東諸国に強く依存している(図表)。日本が輸入する中東産原油の8割がホルムズ海峡を通ることを踏まえると、イランによって同海峡が封鎖された場合に被る悪影響は甚大となる。

原油における日本の中東依存度は高い(資源エネルギー庁資料を基に日本総研作成)

足元では、イスラエルとイランが米国による停戦案に合意したことで、事態は収束に向かっており、原油価格の高騰は一服している。もっとも、日本が中東からの原油調達に強く依存しており、ホルムズ海峡が封鎖されれば経済が大打撃を受ける状況には変わりない。今回の軍事衝突が、イランによる核開発への決意をむしろ強固にすることで、イスラエルや米国とイランとの対立がいずれ再燃する可能性もある。

国際情勢に左右されないエネルギー構造への転換必要

こうした状況を踏まえると、日本政府には、国際情勢の変調に左右されにくいエネルギー構造への転換を迅速に進めていくことが求められる。政府・与党は6月26日から8月末までガソリン価格を1リットル当たり175円(レギュラー、全国平均)に抑える方針を打ち出しているほか、主要野党も共同でガソリン減税を求める法案を提出するなど、与野党問わず価格引き下げに積極的である。

しかし、こうした措置は日本の原油需要を押し上げ、原油調達の中東依存を温存させるリスクがある。7月の参院選では、一時的な価格統制だけでなく、今回のイスラエル・イラン紛争が突きつけた日本の脆弱なエネルギー構造に正面から向き合い、これをいかに克服していくか、中長期的な視野で各党が議論を行うことが期待される。

記事出所: 『環境ビジネスオンライン』 2025年7月2日出典

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