衛星「いぶきGW」搭載GHG観測センサによる観測データを初解析

環境省と国立環境研究所は1月8日、宇宙から地球の温室効果ガスと水を観測する衛星「いぶきGW(GOSAT-GW)」に搭載した「温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)」による観測データの初解析結果を公表した。

今回は精密観測モードによる観測データを解析し、大都市圏におけるCO2・メタン・二酸化窒素の濃度分布を求めた。排出源の特定や排出量推定の精度向上など、科学だけでなく社会への貢献が期待される。

衛星観測でガスの濃度分布を面で捉える

画像はイメージです

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環境省は、国立環境研究所と宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに、温室効果ガス(GHG)観測技術衛星(GOSAT)シリーズを活用し、大気中の二酸化炭素とメタンなどを観測している。GOSAT-GWは、GOSATシリーズの3番目の衛星で2025年6月29日に打ち上げられた。初期機能確認運用を終了し、2025年10月9日より定常運用を行っている。

この衛星に搭載されている温室効果ガス観測センサ・TANSO-3は、全球を900km以上の幅、10kmの空間分解能で面的に観測する「広域観測モード」と、都市域などを90km以上の幅、1~3kmの空間分解能で面的に観測する「精密観測モード」の2つの観測モードを有している。

今回は、2025年9月5日に米国ロサンゼルス周辺で取得された精密観測モードによる観測データの解析を国立環境研究所が初めて行い、大都市圏におけるCO2・メタン・二酸化窒素の濃度分布を求めた(下図)。これらのガスの濃度分布を、衛星観測により同時に、かつ同一の広い視野で面として捉えたのは世界で初めてとなる。この解析結果は、2025年11月にブラジル・ベレンで開催された国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)において発表された。

2025年9月5日に米国ロサンゼルス周辺で取得されたTANSO-3データ(精密観測モード)の解析結果。左からCO<sub>2</sub>のカラム平均濃度(XCO<sub>2</sub>)、メタンのカラム平均濃度(XCH<sub>4</sub>)、二酸化窒素の傾斜カラム量(SCD)(出所:環境省)

2025年9月5日に米国ロサンゼルス周辺で取得されたTANSO-3データ(精密観測モード)の解析結果。左からCO2のカラム平均濃度(XCO2)、メタンのカラム平均濃度(XCH4)、二酸化窒素の傾斜カラム量(SCD)(出所:環境省)

なお、気体の総量を単位面積当たりの地上から大気上端までの柱(カラム)の中にある気体分子の数で表した値をカラム量という。カラム平均濃度は、乾燥空気のカラム量に含まれる温室効果ガスのカラム量の割合をいう。傾斜カラム量は、地表面に垂直なカラムではなく、太陽から発せられた光が地球大気を通過し衛星に到達するまでの経路(光路)で表される、傾いたカラム内に存在する気体分子の数をいう。

温室効果ガスに関する処理とその結果

2025年9月5日にロサンゼルス付近で精密観測モード(3km分解能)により観測された校正前スペクトル(分光データ)に対してCO2、メタンのカラム平均濃度(XCO2、XCH4)の推定処理を行った。

その結果、XCO2、XCH4ともに都市部付近で高い値が見られた。人為起源からの排出による濃度上昇を捉えている可能性がある。ただし、この結果は校正前スペクトルに対するエアロゾルなどを考慮しない簡易的な推定によるものであり、地表面状態やその他の影響を大きく受けている可能性があることに注意が必要だとしている。

人為起源からの排出による濃度上昇の可能性

二酸化窒素の傾斜カラム量(SCD)は、2025年9月5日にTANSO-3により観測された、ロサンゼルス付近での放射輝度スペクトルと太陽光照度スペクトルを用いて、差分吸収分光法(DOAS法)により推定された。

ロサンゼルス付近において、二酸化窒素のSCDが高い観測点を確認でき、沿岸の排出源によるものと思われる二酸化窒素の増加と、排出された気塊の流れを定性的に捉えることに成功した。このような二酸化窒素の情報により、化石燃料の燃焼により、二酸化窒素と同時に排出されるCO2の排出源の特定や、その排出量推定の精度向上などが期待される。

データを校正・検証、2026年初以降に一般公開

TANSO-3のプロダクトには、放射輝度スペクトルデータを含むレベル1Bプロダクトと、今回解析を行ったCO2・メタンのカラム平均濃度と、二酸化窒素の傾斜カラム量を含むレベル2プロダクトがある。今後、データの校正・検証を経て十分な品質となった「レベル1Bプロダクト」を2026年春に、「レベル2プロダクト」を2027年春に、それぞれ一般公開する予定。

排出量報告書の透明性の向上に寄与

温室効果ガス・水循環観測技術衛星GOSAT-GWは、地球上のCO2やメタンガスを広範囲・高精度に観測する温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)と、高精度に地表・海面や大気中の水の物理量を推定する高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)の2つのミッション機器を搭載している。

気候変動に関する科学の発展、気候変動政策・取り組み評価への貢献を目的に、衛星による大気中の温室効果ガスの観測を行う。

【参考】

記事出所: 『環境ビジネスオンライン』 2026年1月13日出典

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