政府、メガソーラー対策でパッケージ策定 規制強化と地域共生を柱に推進
政府は12月23日、大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージを関係閣僚会議で決定した。自然環境や安全、景観への懸念が指摘される中、不適切な事業への法的規制を強化するとともに、自治体との連携を深め、地域と共生する事業形態への支援を重点化する。再生可能エネルギーの導入拡大と地域の信頼確保を両立させるのが狙いで、関係省庁が連携し、速やかに施策を実行することを明確に示した。
法令総点検を踏まえた規制強化を実施

議長を務める木原 稔内閣官房長官(出所:内閣府)
政府は、太陽光発電事業を巡る地域の懸念を踏まえ、関係法令の総点検を実施した。その結果、環境影響評価法や電気事業法の対象見直し、森林法に基づく林地開発許可制度の規律強化など、制度改正による法的規制の強化が必要と判断。自然環境の保護や災害防止、安全性確保を目的に、関係法令を厳格に運用する方針を固め、対策パッケージとして取りまとめた。
国と自治体の連携体制を構築、「再エネ地域共生連絡会議」を設置
この中で、不適切な事案への規制強化とその実効性を高めるために、国と地方自治体の連携を強化する。経済産業省、環境省、総務省は、自治体と情報共有を行う「再エネ地域共生連絡会議」を設置。条例や先進事例の共有を通じ、地域の実情に即した対応を促すほか、全省庁横断の再エネ事業監視体制を構築し、法令遵守を徹底する方針。
地域共生型と次世代技術への支援を重点化、廃棄・リサイクル体制の整備推進も
た、地域と共生する望ましい事業を後押しするため、支援策の見直しも盛り込んだ。屋根設置など地域共生型の導入形態や、ペロブスカイト太陽電池をはじめとする次世代型太陽電池への支援を強化する。あわせて、事業終了後に大量排出が見込まれる太陽光パネルの適切な廃棄・リサイクル体制の整備も進める。
3本柱で推進する対策パッケージ
今回取りまとめた対策パッケージは、「不適切事案に対する法的規制の強化」「地域の取組との連携強化」「地域共生型への支援の重点化」の3本柱からなる。
主な内容は以下の通り。
不適切事案に対する法的規制の強化
(1)自然環境の保護
- 環境影響評価法・電気事業法に基づく環境影響評価の対象の見直し及び実効性強化(環境省、経産省):次期通常国会中に検討結果を取りまとめ、環境影響評価法施行令等を改正予定
- 種の保存法の在り方の検討(環境省):2026年夏頃の検討会取りまとめ結果を踏まえ、制度改正
- 文化財保護法に関する事務連絡の発出(文部科学省):2025年度中に実施予定
- 自然公園法に基づく釧路湿原国立公園の区域拡張(環境省):2026年度中に区域拡張を目指す
(2)安全性の確保
- 森林法に基づく林地開発許可制度の規律強化(農林水産省):2026年4月施行予定
- 電気事業法における保安規制の強化(経産省):10kW 以上の太陽電池発電設備に第三者機関による技術基準適合を確認する仕組みを設置(2026年通常国会での法案提出を目指す)。
- 太陽光発電システムのサイバーセキュリティ強化(同):配電網に接続する際の技術的要件を改正し、「JC-STAR」(一定のサイバーセキュリティ基準への適合を証明するラベリング)取得を要件化(2025年12月方針決定済)。
(3)景観の保護
- 景観法の活用促進(国交省、農水省、環境省):市町村等が、明確な景観形成基準を設けた景観計画を策定、景観法運用指針の改正及び景観法活用マニュアルの作成・公表を行う(2026年春頃までに実施予定)
(4)その他
- 土地利用規制等に係る区域の適切な設定(農水省、国交省、環境省など)
- 関係法令の適切な運用等(農水省、文科省、国交省、環境省、経産省など)
- 着手済の案件に対しても森林法、文化財保護法、土壌汚染対策法、盛土規制法を始めとする各種の関係法令の規制を総動員し、厳格に対応する
- 関係法令違反を覚知した FIT/FIP 認定事業への措置など必要な執行体制の強化
- 太陽光パネルの適切な廃棄・リサイクルの確保(環境省、経産省):適切な廃棄、リサイクルの確保に向けた実効的な制度整備と費用低減に向けた技術開発や、リサイクル設備の導入等への支援
地域の取組との連携強化
- 「再エネ地域共生連絡会議」の設置(経産省、環境省、総務省):2025年度内立ち上げを目指す
- 景観法の活用促進(再掲)
- 文化財保護法に関する事務連絡の発出(再掲)
- 地方公共団体の環境影響評価条例との連携促進(再掲)
- 「全省庁横断再エネ事業監視体制」の構築(経産省):「関係法令違反通報システム」における通報や「再エネGメン」の調査について、非 FIT/非 FIP事業も追加し体制を構築(2026年度予算案に関連予算を計上し、同年度より実施予定)。
地域共生型への支援の重点化
- 再エネ賦課金を用いた FIT/FIP 制度による支援(経産省):2027 年度以降の事業用太陽光について、支援策の重点化と廃止を含めて検討(2025年度中に方針決定)
- 次世代型太陽電池の開発・導入の強化(経産省、環境省、総務省):ペロブスカイト太陽電池の研究開発及び実証への支援強化と需要家向け事前調査などを支援(2027年度実施予定)。タンデム型太陽電池への開発支援強化(2027年度予算案に計上)。地方公共団体のペロブスカイト太陽電池導入支援(2027年度実施予定)
- 屋根設置等の地域共生が図られた導入支援への重点化(経産省・環境省・国交省・農水省):地域共生型の太陽光発電の導入支援重点化を検討(2027年度に方針決定予定)。工場等において屋根への太陽光発電設備の設置状況及び設置余地等の報告、導入検討促進(2027年4月省令施行予定、2028年度報告より実施)
- 望ましい営農型太陽光の明確化・不適切な取組への厳格な対応(農水省)
- 国等の再エネ電力調達における対応(環境省):法令に違反する発電施設で発電された電力の調達を避けることを環境配慮契約法基本方針に組み込む(2027年3月頃、環境配慮契約法基本方針の変更の閣議決定予定)。
- 地域の信頼を得られる責任ある主体への事業集約の促進(経産省):2026年度4月省令施行済

