万博レガシー活用続々、岩谷産業が水素燃料電池船を都へ譲渡 東京湾で運航へ
東京都は10月16日、岩谷産業(大阪府大阪市)と、大阪・関西万博で使用した水素燃料電池船「まほろば」を無償で譲り受け、東京港で運航する事業に関する基本協定を締結した。運航開始は2026年度を予定。東京港を航行する水素燃料電池船を通じて、多くの人に乗船機会を提供する。
万博での展示品や技術など「万博レガシー」を活用する取り組みは、経済産業省、大阪産業局のほか産業界でも相次いでいる。
大阪・関西万博のレガシーを東京港で活用

協定締結の様子(出所:東京都)
水素燃料電池船「まほろば」は、水素燃料電池と蓄電池のハイブリッドで航行する日本初の旅客船で、岩谷産業が建造した。大阪・関西万博では、大阪市内と会場までをつなぐアクセスとして商業運航を実現し、来場者に水素エネルギーを身近に体感してもらう、海上の「動くパビリオン」として役割を果たした。
今回の協定に基づき、東京都と岩谷産業は、東京港において共同で水素燃料電池船の運航事業を実施する。環境学習や国際的なイベントなどでの乗船機会も提供していく。今後、船の運航に必要となる設備などを整備して、2026年度の運航開始を目指す。水素のある社会を身近に感じ、水素燃料および水素燃料電池船の有用性のほか、首都圏の産業と生活を支える国際物流拠点の東京港の役割などを発信する予定だ。

水素燃料電池船「まほろば」(出所:東京都)
「水素を使う」アクションを官民連携で加速
東京都は、「水素で世界をリードする東京」の実現に向けて、燃料電池(FC)モビリティの普及促進や水素ステーションの設置などに取り組んでいる。
9月には、全国初のFCタクシーの都内への大量導入の開始にあわせ、「水素を使う」アクションを加速させる官民連携プロジェクト「TOKYO H2」を新たに開始した。
なお、東京都と岩谷産業は10月10日に、水素燃料電池船の活用に関する基本協定の締結について発表している。小池 百合子都知事は同日の記者会見で、この取り組みについて紹介し、「多くの都民の方など乗船していただいて、水素のある社会、これを身近に感じていただきたい」と述べている。
レガシーの活用に向けた取り組みが活発に
大阪・関西万博は10月13日に閉幕した。大阪・関西万博のレガシーを活用したさまざまな取り組みが始まっている。
経済産業省は、大阪・関西万博で実施した「サーキュラーエコノミー研究所」で使用した一部の展示などをレガシーとして活用し、各地の小学生を対象にした授業型のイベント「サーキュラーエコノミーのがっこう」を開催している。
パナソニック ホールディングス(大阪府門真市)は、大阪・関西万博で、研究開発中のガラス型ペロブスカイト太陽電池や、リサイクル性・生分解性を兼ね備えた植物由来の素材である「kinari(植物由来成形材料)」など、さまざまなアイデアや自然エネルギーを活用した技術を展示した。閉幕後は社会実装に向けた取り組みを加速していくとしている。
大阪産業局・大阪商工会議所が共同設置する中小・スタートアップ出展企画推進委員会は、中小企業・スタートアップが、大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」で披露した出展品・技術の展示商談会を12月に開催する。
大阪商工会議所が会員企業を対象に行った、大阪・関西万博に関するアンケートによると、約9割の企業が「成功だった」と回答、一方で、今後、大阪が取り組むべきこととして、約半数以上の企業が「会場跡地開発」と「未来社会に向けた新技術・サービスが継続的に創出される仕組みづくり」と回答している。大阪商工会議所では、こうした結果を踏まえ、万博で発表された新技術・サービスの社会実装や中小企業・スタートアップの支援を強化していくとしている。
【参考】
東京都-東京都と岩谷産業株式会社との水素燃料電池船の活用事業に関する基本協定締結について 水素エネルギーの社会実装化を力強く推進
記事出所: 『環境ビジネスオンライン』 2025年10月22日出典

