塩害が進む海沿いのメガソーラー、約5万枚が大型パネルに変更

FIT開始から10年あまりが経過し、事業用太陽光発電所でリパワリングが動き出した。
4月には、再エネ発電事業大手ENEOSリニューリアブル・エナジーが沖縄県うるまメガソーラーでリパワリングを完了した。

塩害による太陽光パネル約5万枚を入れ替え

近年、太陽光パネルやパワコン等の性能向上と価格低下が進んでいる。一方で発電事業者の間でも、FIT制度開始から10年あまりが経過したことを機に、事業用太陽光発電所の設備更新を検討する動きが徐々に広がっている。事業者は経年劣化した各設備機器をリプレイス、アップグレートするリパワリングを行うことで、発電効率を改善、増強することができる。

沖縄県うるまメガソーラー発電所(ENEOSリニューアブル・エナジー提供)

沖縄県うるまメガソーラー発電所(ENEOSリニューアブル・エナジー提供)

今年4月、大手再生可能エネルギー発電事業者のENEOSリニューアブル・エナジー(以下ERE)グループが、沖縄県うるま市で運営する「うるまメガソーラー発電所」のリパワリングを完了した。同発電所は2015年3月に運転を開始した設備容量12,200kWの太陽光発電所。発電した電気はFIT価格で沖縄電力に送電されている。海沿いに立地するところから、塩害による太陽光パネルの劣化が進み、昨年11月から、パネル約5万枚を入れ替える工事に着手した。同グループ初のリパワリングである。

事業主体は同発電所の運営・管理を行うENEOSリニューアブル・エナジー・マネジメント(以下EREM)。EREMはEREグループが所有する再エネ発電所約120ヵ所超(設備容量約141万kW、建設中も含む)の運営・管理を担うととともに、既存発電所への蓄電池併設やリパワリング等によって、発電所の競争力をアップし付加価値向上にも取り組む。

設備容量を維持パネル枚数はおよそ半分に

EREM事業運営本部事業運営第3部第2チームでうるまメガソーラーのリパワリングを担当した功刀氏は「リパワリングの対象は直流側のみで、FIT単価を維持するために設備容量(12.2MW)は現状のままとし、約5万枚のパネル(250W)を大型パネル(440W)へ変更し、パネル枚数は半分程度になりました。主な作業はパネル交換と、それに伴うケーブルの配線、架台は元の構造を残したまま若干の改造を加えました」と工事の概要を説明。

「新しいパネルは変換効率、耐風圧性能とも前のパネルより優れ、竣工後、計画通りにしっかりと発電能力を取り戻しました」と成果を披露する。

設計・架台工事・パネル取り付けはハイテックス(福岡県北九州市)に委託。パネルはジンコソーラー製の両面発電タイプを採用。また架台は従来の設備を最大限活かし、部材を足すことでパネルのサイズと合わせ、新たに構造計算を実施した。

撤去パネルリサイクルで再資源化率90%達成

今回のリパワリングの大きな課題の一つである撤去した太陽光パネルのリサイクルについては浜田(大阪府高槻市)に委託。

今国会で見送られた太陽光発電設備の廃棄・リサイクル制度義務化の法案に先駆けて、取り外したパネルのリサイクルで再資源化率約90%を達成した。特に6割を占めるガラス部分はグラスウールや工芸品等に有効利用。さらに残り10%のプラスチック残滓等に関しても埋立て処理ではなく熱回収し、資源回収率としては100%を達成している。

再エネ電源を維持することが再エネ事業者のミッション

同グループの既存太陽光発電所のリパワリングは、今後、発電事業者が既存発電所の発電効率を回復・向上させる取組みの先行事例となる。

同本部事業運営第3部第2チーム、チームリーダーの髙橋氏は「当社は基本的に20年というFIT期間に捕らわれずに、必要なタイミングを見極めてリパワリングや、蓄電池併設などを効果的に実施することで、発電所の継続的な運用を目指しています。今回のリパワリングでも、FIT期間10年の折り返し時点で、残り10年間の収支だけを考慮するのではなく、FIT終了後のさらに10年先の発電所の能力維持をも見据えて、更新時期を判断しました。投入資金もFIT期間内に回収できるめどが立っています」と話す。

事業運営第3部では各発電所の毎月のデータを正確に把握し、発電量が下がっていれば発電所の運用パフォーマンスを高める観点から積極的に対策を講じていく。

髙橋氏は「我々は再エネ発電事業者として、発電所を投資対象としてではなく、あくまでkWhを生み出す再エネ電源として捉えています。おカネをはやく回収することだけが目的ではなく、安定的かつ高いパフォーマンスで長期間稼働できるように発電所を維持していくことが、我々のミッションです」と表情を引き締める。

さらにリパワリング、蓄電時併設の計画を進める

EREグループが所有する再エネ発電所はFIT認定から10年経過するものも多く、FIT単価30円台のものも多い。

功刀氏は「うるまメガソーラーのリパワリングを成功事例として踏まえ、すでに幾つかの発電所を対象にパワコンやパネルの更新を中心としたリパワリングの検討を進めています。また、再エネの安定供給体制を整えるためにJRE稲敷蒲ヶ山太陽光発電所(茨城県)やJRE福智第三太陽光発電所(福岡県)では蓄電池を併設していますが、今後、他の発電所でも積極的に併設する計画を進めていきます」と功刀氏。

髙橋氏も「EREグループは再エネ発電所の開発から、運営管理を行うとともに、電力需給管理や小売電気事業も展開しています。太陽光発電の適地減少もあり、これまでのようなFIT制度交付金頼みの電源開発では再エネ事業継続が難しくなっています。蓄電池タイムシフトによる売電単価とプレミアム価値向上を図るFIP+蓄電池モデルの採用や、需要家ニーズに沿ったコーポレートPPAなどの事業展開と一体となり、チームとしてもリパワリングや蓄電池併設などを進めて、積極的にkWhの供給を増やしていきたい」と意欲的だ。

記事出所: 『環境ビジネスオンライン』 2025年10月15日出典

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