花王、使用済み紙おむつを半炭化し活用 第2弾実証を徳島県上勝町で開始

花王(東京都中央区)は10月1日、使用済み紙おむつを半炭化して資源として活用する炭素化リサイクルシステムの実証実験を徳島県上勝町で開始すると発表した。

この実証実験では、これまでの半炭化物を土壌改良資材などとして用い炭素を固定する方法とは異なる新たなアプローチとして、化石燃料の代替燃料としての地域活用を検討する。2021年から愛媛県西条市で行っている実証実験を発展させた第2弾の取り組みとなる。

処理の課題解決とCO2排出量の削減に向けて

使用済み紙おむつの半炭化装置を設置する上勝町ゼロ・ウェイストセンター全景(出所:花王)

使用済み紙おむつの半炭化装置を設置する上勝町ゼロ・ウェイストセンター全景(出所:花王)

花王は、使用済み紙おむつの処理の課題解決とCO2排出量の削減を目指して、使用済み紙おむつを半炭化できる炭素化装置を開発した。

開発した炭素化装置(出所:花王)

開発した炭素化装置(出所:花王)

この炭素化装置では、花王独自の熱分解技術により、燃焼に至らない低温で水分を除去し、炭素を多く含む半炭化物に加工する。使用済み紙おむつを焼却するとCO2が発生するが、炭素化装置で半炭化物にすることで、炭素が固定され排出されるCO2を抑制できる。また、殺菌・消臭が行われ衛生的に処理できるほか、発生場所で処理ができ、体積も小さくなるため回収負担が軽減できる。

炭素化リサイクルシステムの概念図(出所:花王)

炭素化リサイクルシステムの概念図(出所:花王)

愛媛県西条市での実証実験について

愛媛県西条市での実証実験では、保育施設に、花王が開発した炭素化装置1号機を2021年11月に設置した。この装置により、使用済み紙おむつの体積を約1/20にまで減らし、炭素を多く含む半炭化物の加工にも成功している。また、生成された半炭化物は高い燃焼熱を備えており、従来の化石燃料の代替品となる燃料として活用できることがわかった。

半炭化物(出所:花王)

半炭化物(出所:花王)

2025年以降の社会実装を見据えて実証実験

徳島県上勝町では、炭素化リサイクルシステムの社会実装を見据えた実証実験を10月より開始する。花王と上勝町は、その実施にあたり包括連携協定を締結した。

上勝町は2003年に「ゼロ・ウェイト宣言」を行い、その発信拠点として、2020年5月に「上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)」を開設している。そのゴミステーションでは、住民がごみを持ち込み、13種類・43分別に分類し、80%を超えるリサイクル率を維持している。

センター内のごみステーション(出所:花王)

センター内のごみステーション(出所:花王)

今回の実証実験では、そのごみステーションに炭素化装置2号機を設置する。2号機は、西条市に設置した1号機と比べ、1回あたりの最大処理量が約30kgから50kgに拡大し、より多くの量を一度に処理できる仕様としている。また、1号機よりも少ないエネルギーでの処理が可能だ。

住民は持ち込んだ使用済み紙おむつを炭素化装置で処理し、装置で加工する半炭化物は、化石燃料の代わりに燃料として活用する。

開発した炭素化装置に使用済み紙おむつを投入する様子(出所:花王)

開発した炭素化装置に使用済み紙おむつを投入する様子(出所:花王)

この実証では、高齢者を含む幅広い世代が無理なく日常的に利用できるを検証するほか、病院などの大規模施設への設置も想定しながら社会実装に必要な要素を明らかにし、2025年以降の社会実装を目指す。

記事出所: 『環境ビジネスオンライン』 2025年10月2日出典

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