脱炭素先行地域、政府目標まで「あと12」 2030年までに具体的成果必要

第6回脱炭素先行地域に選ばれた福井県池田町(出所:池田町)

第6回脱炭素先行地域に選ばれた福井県池田町(出所:池田町)

2050年カーボンニュートラル実現のため、脱炭素の取り組みで先駆的な地域「脱炭素先行地域」が、5月9日の第6次選定により7件が追加され、全国で計88件となった。政府は全国100カ所を脱炭素先行地域に選定する目標を掲げており、目標までは「あと12」。はたして、実現性・実効性のあるものになるだろうか。

第6回脱炭素先行地域、7件選定

5月9日に公表された第6回選定結果によると、全国で7件(6県10市町)が新たに選定された。

米沢牛の約6割を飼育する山形県米沢市・飯豊町は米沢牛のサプライチェーン全体で脱炭素化を進め、認証取得によるブランド価値向上を目指す。肉用牛糞を活用したオフサイト型バイオガス発電設備を導入し、災害時の食肉ロス防止のため食肉センターへ木質バイオマス発電設備を導入する。

千葉・市川市、賃貸集合住宅での脱炭素目指す

子育て世帯が多い賃貸集合住宅が多く集まるエリアがある千葉県市川市は、賃貸住宅断熱性能の公表制度を設け、市独自の家賃補助制度を構築する。断熱改修や屋根にさまざまな手法での太陽光発電設備を導入するなど、既存の賃貸集合住宅の脱炭素化、子育て世帯の定住促進を目指す。

千葉県市川市は賃貸集合住宅の脱炭素化を進める(出所・環境省)

千葉県市川市は賃貸集合住宅の脱炭素化を進める(出所・環境省)

豪雪地帯として知られる福井県池田町は、町と事業者の実証実験で有効性が確認された融雪機能付き太陽光発電のPPA事業の展開などに加え、遊休農地で垂直型太陽光発電による蕎麦やヨモギなど特産品の営農型太陽光発電などを展開し、地域で地域課題の解決を目指す。

人口減、過疎化が急速に進む鳥取県倉吉市は、存続が危ぶまれる中山間地域の集落でドクダミを栽培する営農型太陽光発電を展開する。健康茶などを製造する地元県内事業者と全量取引し、農地の維持と地域経済の活性化と新規就農者の確保・育成に取り組むための枠組みを構築する。

広島・北広島町、小水力発電を行政主導で推進

広島県の山間部にある広島県北広島町は、小水力発電の開発を行政主導で進める。導入から維持管理までを一括で支援し、開発事業者の参入を促すことで町外からの投資を呼込み、地域活性化につなげる。

広島県北広島町は豊かな自然を生かし、小水力発電を脱炭素の柱に据えている(出所:北広島町)

広島県北広島町は豊かな自然を生かし、小水力発電を脱炭素の柱に据えている(出所:北広島町)

しまなみ海道の四国側の起点として知られる愛媛県今治市は、しまなみ海道ブルーラインと今治タオルという2つの地域資源をソフト・ハード両面から脱炭素化し、ブランド価値の向上を狙う。観光振興策、交流人口の拡大による島嶼部の振興、今治タオル産業の製造過程で生じた廃水を活用したバイオガス発電などに取り組む。

宮崎市中心部にZEB3棟建設

宮崎県宮崎市は中心市街地である宮崎駅周辺の活性化のため、産学官連携の体制を整備。省エネ基準を満たせば容積率の緩和や固定資産税の軽減などの優遇措置を設ける市の独自制度「まちなか投資倍増プロジェクト」と連動し、新築ZEB3棟を建設する。建物の脱炭素と施設誘致・投資促進を両立させる。

脱炭素先行地域は2022年から選定が始まった。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、民生部門(家庭部門、業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出実質ゼロを目指す。運輸部門や熱利用などでのGHG排出量削減でも2030年度目標に沿った削減目標を実現できる地域、脱炭素のモデルケースとして期待されている。

脱炭素先行地域は第6回までで計88件となった(出所:環境省)

脱炭素先行地域は第6回までで計88件となった(出所:環境省)

第7回選定で100件到達なるか

政府は2025年度までに全国100カ所の脱炭素先行地域を選定する目標を掲げている。今回の第6回選定により88件となり、早ければ次回の第7回選定によって100件に到達する可能性がある。先行地域で住民の暮らしの質の向上や地域課題の解決とともに削減目標を達成するためには、カーボンニュートラル「中間評価」にあたる2030年に具体的な成果を出す必要がある。2030年まであと5年。これらの地域はどこまで脱炭素の取り組みにおいて「先行」しているのだろうか

記事出所: 『環境ビジネスオンライン』 2025年5月28日出典

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